循環器科|三田駅から徒歩6分の内科・循環器科-いなずみ内科・循環器科

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循環器科

Cardiology

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循環器科

高血圧症

高血圧症とは

血圧とは心臓から血液を送り出すとき、血液によって血管(動脈)の壁にかかる圧力のことです。心臓が収縮して血液を送り出した時の血圧を「収縮期血圧(最高血圧)」、心臓が拡張した時の血圧を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。高血圧症とは収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上が、安静時でも慢性的に続く状態をいいます。高血圧症には親が高血圧であるなどの遺伝的要因と他のさまざまな要因が加わって発症する「本態性高血圧」と、腎臓疾患や内分泌異常、血管の異常などが原因で起こる「二次性高血圧」とに分けけられます。高血圧の90%は「本態性高血圧」です。「本態性高血圧」は、体質的に高血圧になりやすい人に、生活習慣(塩分の過剰摂取、喫煙、肥満、過度の飲酒、運動不足)、ストレス、加齢などの要因が加わることによって引き起こされます。「二次性高血圧」は腎臓疾患、内分泌異常(原発性アルドステロン症、褐色細胞腫)、腎血管異常などが原因で引き起こされます。

高血圧症の症状

高血圧症のほとんどは自覚症状がなく、健康診断などの血圧測定ではじめて発見されることが多い疾患です。肩凝りや頭重感、めまい、動悸、息切れなどの症状が出る場合もあります。高血圧症の状態を放置していると、動脈硬化が起こり、脳梗塞や脳出血、狭心症や心筋梗塞、心不全、慢性腎臓病、閉塞性動脈硬化症などの重大な病気につながります。これらの疾患をおこさないために高血圧は症状がなくても治療が必要なのです。

高血圧症の診断

外来では、問診、診察、自宅血圧、検査などを総合して診断していきます。問診では家族歴(両親の高血圧、脳心血管疾患などの有無)、生活習慣(飲酒、喫煙、運動習慣など)、ストレスの有無などを聞きます。職場や家庭、親の介護におけるストレスは高血圧の原因となることも多く重要です。
自宅血圧記録の観察は重要です。自宅血圧記録の観察により、自宅血圧が正常で診察時のみ血圧が上がる「白衣高血圧」、逆に自宅血圧は高いのに診察時の血圧が正常な「仮面高血圧」、早朝に血圧が上がる「早朝高血圧」などを鑑別できます。「白衣高血圧」はすぐに治療を開始する必要がなく、「仮面高血圧」や「早朝高血圧」は脳血管疾患のリスクが高いので注意が必要です。自宅血圧記録の観察により、患者様ごとに、治療が必要な高血圧症なのか、血圧コントロールがうまくいっているか等を判断していきます。
診察では聴診で心音、呼吸音のほか、腹部血管雑音の有無で腎血管の狭窄がないかを確認します。下肢のむくみがないかを確認します。検査では、検尿(尿蛋白の有無)、胸レントゲン(心拡大、心不全の有無)、血液検査(腎臓病、糖尿病、脂質代謝異常・ホルモン異常の有無など)を実施します。
これらを総合して、「二次性高血圧」でないかを確認します。血液検査は「二次性高血圧」のひとつである原発性アルドステロン症の診断に有用です。「二次性高血圧」が除外されれば、「本態性高血圧」と診断します。

高血圧症の治療

その1) 食事療法:高血圧症の治療としては、第1に塩分制限を中心とした食事療法が重要です。食塩摂取量は6-8g/日が理想です。塩分制限では、ラーメン、うどんなどの麺類は特に塩分が多く、お汁は残す、麺類の頻度を減らすことが有効です。漬物、梅干し、ハムなどの加工食品、インスタント食品は塩分が多く、控えめにしましょう。醤油のかけすぎにも注意しましょう。第2にカリウム摂取は降圧効果があります。野菜、果物、豆、いも類にはカリウムが多く含まれています。それらは、ゆでたり、煮たりすると、カリウムが汁にでてしまうので調理方法を工夫しましょう。逆に腎臓の悪い患者様はカリウムを制限しなければいけません。

その2) 運動療法:ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。運動自体が血圧降下に効果がありますが、体重減少(肥満の解消)も血圧降下に大きな効果が期待できます。現在、当院に受診されている高齢者の患者様も、日頃、ウォーキング、スポーツジムで運動されている方も多く、外見も若々しく、驚いています。運動が健康につながることを実感しています。運動されている方は血圧も、血糖も、コレステロール値も、中性脂肪値も、良い数値でコントロールされています。私自身も開業して、ジョギングや、自転車など運動を始めました。運動不足で体重は開業時72kgほどでしたが、運動を初めて徐々に減り、60kg前後に維持しています。以前は血圧がやや高くなることがありましたが、現在は問題なく、経過しています。体重減少が血圧正常化に効果があると実感しています。何より、運動はストレス解消に効果がでていると思っています。

その3) 内服治療:それぞれの患者様に合わせた降圧薬を少量から開始し、ゆっくり増量していきます。必要なら数種類の降圧剤で目標の血圧に下げていきます。薬の調節の判断には自宅血圧記録が重要です。高血圧の原因により、薬の選択をしていきます。

その4) 降圧目標:年齢(75歳以上か、75歳未満か)、特定の疾患(糖尿病、慢性腎臓病、脳血管障害、冠動脈疾患)の有無で異なります。75歳以上や、それら疾患のない方は家庭血圧135mmHg未満/85mmHg未満(診察時血圧140mmHg未満/90mmHg未満)、75歳未満、特定の疾患(糖尿病、慢性腎臓病、脳血管障害、冠動脈疾患)のある方の降圧目標は家庭血圧125mmHg未満/75mmHg未満(診察時血圧130mmHg未満/80mmHg未満)と、より厳しい目標値になります。

不整脈

不整脈とは

不整脈とは、脈がとぶ(期外収縮)脈が速すぎる(頻脈)脈が乱れる(心房細動)脈が遅すぎる(徐脈)などの心拍リズムの異常のことをいいます。心臓は血液を全身に送るポンプの働きをする臓器で4つの部屋(右心房、左心房、右心室、左心室)で構成されています。
心臓は右心房に存在する洞房結節という部位(ペースメーカー:発電所)から発生する電気興奮が(刺激伝導系といわれる繊維を介して)心房から心室に伝わり、収縮(心房ついで心室が順序良く収縮)を繰り返しています(図1)。正常な脈は洞房結節の調律で洞調律といいます。脈がとぶ不整脈(期外収縮)は洞房結節と異なる場所から発生する電気興奮により短い間隔でおこる心臓の収縮です。多くは、特に心配なく、治療の必要はありません。脈が速すぎる不整脈(頻脈)は、洞調律とは異なる速い電気興奮が発生して起こります。決まった回路内を一定の頻度で興奮する頻脈(発作性上室性頻拍、心房粗動、心室頻拍など)と、左心房から発生する不規則な頻度で興奮する頻脈(脈が乱れる不整脈:心房細動)があります。動悸などの自覚症状が強く、多くは治療が必要です。脈が遅すぎる不整脈(徐脈)には、①洞房結節の電気発生機能が低下する洞不全症候群(持続する洞徐脈,洞停止,洞房ブロック)と、②刺激伝導系の電気の流れが悪くなり発生する房室ブロック,③徐脈性心房細動とがあります。高度の徐脈(心拍数40/分台)や一過性心停止(脳への血流が数秒とまる)が原因で息切れ、めまいなどの自覚症状が出る場合はペースメーカー治療が必要となります。

その1)脈がとぶ(期外収縮):電気興奮が発生する部位により上室性(心房性)期外収縮(図2)と心室性期外収縮(図3)に分けられます。上室性期外収縮と心室性期外収縮の多くは特に心配なく、治療の対象にはなりません。
自覚症状が強く、脈がとぶことで不快を感じる場合には、抗不安薬(不安を和らげる薬)や抗不整脈薬(不整脈を減らす薬)を処方する場合もあります。上室性期外収縮が頻発する場合に心房細動が発生する場合があり、経過観察が必要です。心室性期外収縮のうち、3連発以上が認められた場合は、心室頻拍という悪性の不整脈に移行する場合があり注意が必要です。ホルター心電図検査(長時間心電図記録)が心室性期外収縮の連発の有無を確認するのに有用です。

その2)脈が速すぎる(頻脈)、脈が乱れる(心房細動)
A)心房細動:心房細動は脈が速く、かつ不規則な脈の乱れを伴います。自覚症状は頻脈による動悸や、心不全による息切れ、むくみです。初発症状で多いのは頻脈による強い動悸です。
初めは短時間で治まり、正常な脈に自然に戻る発作性心房細動で始まります。徐々に発作の持続時間が長くなり、発作の頻度が増えていき、やがては常に脈が乱れた状態の慢性心房細動に移行していきます。慢性心房細動の30-40%は頻脈にならず、動悸などの自覚がないままに経過して、健診の心電図で見つかります。心房細動の頻脈が数日間持続すると心不全をきたし、息切れ、むくみがでてきます。また、左心房内に血栓(血液のかたまり)ができて、血栓がはがれて血管につまる塞栓症(脳梗塞、腎梗塞、腸管動脈塞栓症、下肢動脈塞栓症)などの合併症をきたす危険性があります。心房細動の原因には、加齢、生活習慣病(高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満、アルコール多飲、睡眠時無呼吸症候群)、甲状腺機能亢進症、心疾患(弁膜症、心筋梗塞、心筋症)があります。それらが下地となって心房が傷つき、左心房と直結する肺静脈から非常に高い頻度の電気興奮が発生して、心房が1分間に300回前後の非常に速い小刻みなけいれん状態となります(図4)。

心房細動の治療には、薬物療法カテーテルアブレーション治療があります。

薬物療法(くすり)
には、抗不整脈薬頻脈改善薬抗凝固薬、利尿剤があります。抗不整脈薬は心房細動をおこしにくくする(予防)目的と、心房細動を正常の脈に戻す(治療)目的があります。頻脈改善薬は速い心拍数を軽減するくすりです。
頻脈が数日間持続すると心不全をきたし、心臓に負担がかかり続けると心不全になり、息切れやむくみ(顔、腹部、下肢)がでます。頻脈改善薬は心不全の予防、治療の目的で内服します。利尿剤はむくみの改善、心不全の治療として内服します。利尿剤は、心不全により血液の循環が悪くなるために体(肺や下肢など)にたまった水分を尿として体外へ排出します。

抗凝固薬
は心房内血栓を予防する目的で内服します。心房細動では心房がけいれん状態となり、心房収縮がなくなるため、心房内の血流がよどみ、左心房内血栓(血液のかたまり)がおこりやすくなります。血栓が心房からはがれると、脳血管や腹部の血管、下肢の血管につまる動脈塞栓症をきたし、脳梗塞や腎梗塞、下肢動脈塞栓症を引き起こします。特に、75歳以上、特定の疾患(高血圧、糖尿病、心不全、脳梗塞)の既往がある場合は脳梗塞のリスクが高く、抗凝固薬の内服が必要です。
抗凝固薬にはワーファリンと新規抗凝固薬(「NOAC:new/novel oral anticoagulant」、または直接経口抗凝固薬「DOAC:direct oral anticoagulant」と呼ぶ)があります。新規抗凝固薬はワーファリンと比較し高価ではありますが、ワーファリンと異なり、血液検査での用量調節が不要で、脳出血などの合併症は少なく、ワーファリンと同等の抗血栓作用があるという利点があります。

カテーテルアブレーション治療は、専門病院に入院して行う根治療法で、カテーテルによる心筋焼却治療のことです。カテーテルを血管に挿入して、心房細動の原因となる肺静脈から発生する異常な電気興奮が左心房に入ってこないように焼却する「肺静脈隔離術」です。カテーテルアブレーションの根治成功率は、発作性心房細動が慢性心房細動より高く、慢性化して経過が長くなるほど低下します。カテーテルアブレーションの適応は、年齢、発作性か慢性か、慢性状態の経過年数、既往歴(心不全や血栓塞栓症の有無)などを考慮して決定します。当院ではカテーテルアブレーション専門病院への紹介を行っています。心臓弁膜症、心筋梗塞などの心疾患が原因の心房細動では、それら心疾患の手術治療の際に同時に行う「肺静脈隔離術」があり、専門病院への紹介を行っています。

心房細動の治療
は患者様それぞれの状態や、症状、年齢に応じて決めていきます。発作性心房細動があっても頻度が非常に少ない場合は無治療で経過観察します。頻度が少なくても、たまに発作性心房細動を起こす場合には発作時の頓服薬で対処します。発作性心房細動の頻度が多くなれば、抗凝固薬や、抗不整脈薬を処方します。またカテーテルアブレーション治療の適応を判断して、入院での根治療法まで実施するか相談していきます。慢性心房細動の方も、まだ経過が短い方はカテーテルアブレーション治療を考慮します。経過の長い慢性心房細動の患者様の多くは、内服治療にて心拍数のコントロール、血栓予防をしていれば、心不全や、塞栓症をきたさず、普通の生活を送ることが可能です。

B)心房粗動:心房内の決まった回路内を電気信号が一定の頻度で回旋する頻脈で、一定の規則的な頻脈をきたします。1分間に300回前後の頻度で心房は興奮していますが、房室結節(変電所)が脈の伝導を調節するため、心室に電気興奮が伝わる際には、2:1伝導では150回/分、3:1伝導では100回/分の規則正しい一定の心拍数の頻脈となります(図5)。

自覚症状は心房細動と同様で、頻脈による動悸や、心不全による息切れ、むくみです。心房細動と比べ、発作性の場合は少なく、いったん心房粗動となれば持続することが多い不整脈です。また心房粗動から自然に心房細動に移行することもあります。2:1伝導で150/分程度の頻脈が数日間持続すると心不全をきたし、息切れ、むくみがでてきます。4:1伝導であれば心拍数は75/分程度で頻脈とならず、動悸などの自覚がないままに経過して、健診の機会に心電図で見つかる場合もあります。また、心房細動ほど頻度は高くありませんが、左心房内に血栓(血液のかたまり)ができて、脳梗塞などの合併症をきたす危険性があります。心房租動の原因には、心房細動と同じく、加齢、生活習慣病、心疾患(心臓手術後、弁膜症、心筋梗塞、心筋症)があります。


心房粗動の治療
には、薬物療法カテーテルアブレーション治療があります。

薬物療法(くすり)
には、頻脈改善薬抗不整脈薬、抗凝固薬があります。心房粗動で2:1伝導、3:1伝導の場合は約100回/分以上の頻脈となり、数日間持続すると心不全をきたし、息切れやむくみがでます。頻脈改善薬は速い心拍数を軽減するくすりで、心不全の予防、治療の目的で内服します。抗不整脈薬は心房粗動を正常の脈に戻す治療)目的、心房粗動を予防する目的で使われます。抗凝固薬は心房内血栓を予防する目的で内服します。心房細動ほどは血栓症の頻度は高くないものの、持続性心房粗動や、再発性心房粗動は脳梗塞のリスクが高く、抗凝固薬の内服が必要です。

カテーテルアブレーション治療
心房粗動の多くは右心房内で三尖弁の周囲を電気興奮が旋回することで生じます。心電図では基線が鋸歯状(のこぎりの歯状)の決まった波形となり通常型心房粗動と呼びます。不整脈の電気回路が決まっていますので、カテーテルアブレーション治療で高率に完治することができます。一方、その他の心房粗動では、電気回路が様々で(心房に流入する静脈の周囲で旋回するもの、心房内の傷んだ組織の周囲を旋回するもの、過去の心臓手術における切開線の周りを旋回するものなど)、心電図波形も様々です。このような心房粗動もカテーテル検査で回路が判明すればカテーテルアブレーション治療が可能な場合もあります。


C)発作性上室性頻拍:
心房(上室)を含む決まった回路内を電気信号が一定の頻度で回旋する頻脈で、一定の規則的な頻脈をきたします。自覚症状頻脈による動悸です。突然に頻脈となり、突然にもとの正常な脈にもどるのが特徴です。心拍数は120-180と個々で様々です。動悸は激しくても多くは生命に危険はありません。持続時間も様々で1分以内の場合もあれば、数時間持続する場合もあります。原因となる回路により房室回帰性頻拍(WPW症候群)房室結節回帰性頻拍とに区別されています。

房室回帰性頻拍(WPW症候群):正常の伝導路(房室結節)以外に、心房と心室の間に余分な電線(副伝導路)が生まれつき存在し、正常の伝導路と副伝導路との間で電気の旋回が起こって頻脈が発生します(図6)。WPW症候群は特徴的な心電図波形(デルタ波)から健診などでみつかります。生まれつき頻脈をきたす原因回路が存在しますが、一定の年齢になるまでは頻脈発作は起こらないことが多く、3-4割の人はずっと発作が起こらないと言われています。頻脈の引き金は不整脈のひとつである期外収縮で、原因回路に侵入した電気信号が旋回して頻脈を発生します。電気回線内で電気興奮がとだえると頻脈は止まり、元の正常洞調律の脈にもどります。心電図は正常でデルタ波にみられない不顕性WPW症候群でも同様に副伝導路が存在するため、頻拍を起こします。

房室結節回帰性頻拍:正常の伝導路の房室結節内に2重伝導路(速い伝導路と遅い伝導路)が存在し、速い伝導路と遅い伝導路との間で電気の旋回が起こって頻脈が発生します(図7)。WPW症候群と同じく、生まれつき頻脈をきたす原因回路が存在し、一定の年齢になるまでは頻脈発作は起こらないことも同様です。頻脈の引き金は期外収縮で、原因回路に侵入した電気信号が旋回して頻脈を発生します。電気回線内で電気興奮がとだえると頻脈は止まり、元の正常洞調律の脈にもどります。

発作性上室性頻拍の治療には、薬物療法カテーテルアブレーション治療があります。

薬物療法(くすり)には、抗不整脈薬頻脈改善薬があります。抗不整脈薬は発作性上室性頻拍をおこしにくくする(予防)目的と、発作性上室性頻拍を正常の脈に戻す(不整脈停止)目的があります。頻脈改善薬は頻脈発作時の速い心拍数を軽減するくすりです。房室回帰性頻拍(WPW症候群)と房室結節回帰性頻拍とは、同じ抗不整脈薬と頻脈改善薬が使われます。頻脈発作の持続時間は様々で1分以内に治まる場合から数時間続く場合もあります。発作時に自分で頻脈を止める手段に「息こらえ(息をとめてお腹に力をいれて、いきむ)」が有効なことがあります。「息こらえ」は副交感神経刺激となり、不整脈回路の電気伝導に影響し、電気回旋を停止する作用があります。まれにしか頻脈発作が起こらない場合は、頻脈が持続するとき、頓服薬を内服します。30分ほどで薬の効果が出て、頻脈が治まります。発作が頻繁に起こる場合は、普段から予防的に内服します。

発作性上室性頻拍のカテーテルアブレーション治療
は、専門病院に入院して行う根治療法です。カテーテルアブレーション治療とは、カテーテルによる心筋焼却治療のことです。カテーテルを血管に挿入して、発作性上室性頻拍の原因となる副伝導路や、房室結節の遅い伝導路を焼却して、電気が流れないようにする治療です。不整脈の電気回路が決まっているので、高率に完治することができ、いずれは内服が不要となる利点があります。カテーテルアブレーションの適応は、発作時の症状が強く日常生活に支障をきたす場合、予防薬内服にても頻脈発作が起こってしまう場合、根治して薬を中止したい場合などです。当院ではカテーテルアブレーション専門病院への紹介を行っています。


D)心室頻拍:
心電図で幅の広いQRS波形の頻拍で、非持続性心室頻拍持続性心室頻拍に区別されます。1)非持続性心室頻拍:心室性期外収縮の3連発以上、30秒未満の心室頻拍を非持続性心室頻拍と呼びます。基礎心疾患のない非持続性心室頻拍と基礎心疾患(心筋梗塞、心筋症、心筋炎)に伴う非持続性心室頻拍に区別されます。

基礎心疾患のない非持続性心室頻拍
:基礎疾患がない、心室期外収縮連発・単形性非持続性心室頻拍は,特発性で一般に予後はよいと考えられています。したがって,自覚症状がないか軽度の場合はあえて薬物投与を行う必要はありません。むしろ,睡眠不足や喫煙など不整脈を悪化させる生活習慣の改善を指導します。動悸などの症状が中等度または高度の場合,不整脈の存在によって生活の質(Quality of Life:QOL)が低下し,患者様が薬による治療を望まれる場合には、内服治療を検討します。心電図波形を分析することによって発生機序をある程度推測することが可能で選択すべき薬剤を特定することができます。

基礎心疾患(心筋梗塞、心筋症、心筋炎)に伴う非持続性心室頻拍:基礎心疾患に伴う非持続性心室頻拍は、心機能正常例と心機能低下例で、また心筋梗塞の既往の有無で薬剤を使い分けます。循環器専門医による的確な治療が必要です。特に心筋梗塞急性期(発症48時間以内)では心室性期外収縮の3連発以上は致死性の高い心室頻拍や心室細動に移行することがあり、集中治療室(ICU)での心電図モニターで的確な抗不整脈の静脈注射による治療が必要になります。心筋梗塞発症48時間~1か月の心室性期外収縮の3連発以上は治療適応を考慮します。特に不整脈に伴ってめまい・失神を来たす例では,必要に応じて心臓電気生理学的検査(カテーテルによる不整脈検査)等を行って突然死のリスクを詳細に評価し,致死性不整脈が誘発されるなど高リスクと判断された場合は,アミオダロン,ソタロールなどの抗不整脈薬を内服します。薬剤を適正に用いても効果が不十分で,持続性心室頻拍や心室細動発生の危険性が高いと判断された場合は植込み型除細動器(ICD)を考慮します。

2)持続性心室頻拍:30秒以上持続するか,それ以内でも停止処置を必要とする心室頻拍を持続性心室頻拍と呼びます。持続性心室頻拍は不整脈による突然死の主因で,致死性不整脈と呼ばれる悪性不整脈です。心拍数が200拍/分を超えると高率に失神を来たします。心機能の低下例では,より低い心拍数でも重症となります。持続性心室頻拍の基礎疾患は心筋梗塞,心筋症,催不整脈性右室心筋症,心臓手術後(先天性心疾患:ファロー四徴症,大血管転位など)などです。治療は救急搬送にて専門病院での治療となります。突然、失神し倒れた人に遭遇した場合は、救命処置が必要です。意識の確認にて反応がなければ致死性不整脈(心室頻拍、心室細動)を想定して、心臓マッサージを開始し、周りに助けを求め、AED、救急連絡など求めます。治療には内服治療、カテーテルアブレーション治療、植込み型除細動器(ICD)などがあります。

E)心室細動、無脈性心室頻拍、多形性心室頻拍、:これらの不整脈がでると、急激な脳血流低下を来たし、意識消失して倒れ,適切な治療により回復しない場合は死に至ります。

心室細動:心室細動は,最も重篤な不整脈で,発作後ただちに脈が触れなくなり意識が消失します。虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞),心不全などに伴って発症することが多いですが,明らかな心疾患を伴わないで起こる場合(特発性)があります。
②無脈性心室頻拍:無脈性心室頻拍は脈拍を触知しない心室頻拍であり、有効な循環を維持し得ない不整脈であるため心室細動と同様に扱います。
多形性心室頻拍:多形性心室頻拍は頻拍中の心電図波形が刻々と変化し,心電図波形が基線を中心にしてねじれているように見えます。多くは非持続性で自然停止しますが,時に心室細動に移行します。多形性心室頻拍は心電図上QT延長を伴っている場合と伴っていない場合に分けられます。QT延長に伴い発症する多形性心室頻拍はトルサドポワン(torsade de pointes)と呼ばれ,原因が明らかな後天性 QT延長症候群先天性QT延長症候群に分類されます。後天性の原因は薬剤によるものが多く,抗不整脈薬だけでなく,非心臓薬(向精神薬,抗生剤,抗アレルギー薬など)が原因のこともあります。QT延長を伴わない多形性心室頻拍は,狭心症,心筋梗塞、心不全,ショックなどの心機能低下に伴って起こる場合が多く,この場合は心室細動への前駆的不整脈といます。明らかな心疾患を伴わず起こる多形性心室頻拍の代表的なものに,ブルガダ症候群カテコラミン誘発多形性心室頻拍があります。ブルガダ症候群は胸部誘導(V1 ~V3)のST上昇を特徴とする疾患で,若年~壮年男性の突然死の原因として注目されています。一方,カテコラミン誘発多形性心室頻拍は,感情の高まり,運動,薬剤(イソプロテレノー投与)で発作が誘発されます。

【発作時の治療】発作時には自然停止しない場合と自然停止する場合があります。

自然停止しない場合:とくに心室細動、無脈性心室頻拍は自然停止しません。ただちに直流通電(DCショック)が必要です。突然、失神し倒れた人に遭遇した場合は、救命処置が必要です。意識の確認にて反応がなければ、これら致死性不整脈を想定して、心臓マッサージを開始し、周りに助けを求め、AED、救急連絡など求めます。

自然停止する場合:多形性心室頻拍(QT延長症候群、ブルガダ症候、カテコラミン誘発多形性心室頻拍)では自然停止し、反復する特徴があります。いずれも入院での専門的治療が必要です。

QT延長症候群:洞調律の心電図(発作前または発作の合間に記録される心電図)においてQT延長の有無を診断します。QT延長を認める場合はQT延長を起こしている原因治療が基本ですが,マグネシウムの静脈注射や低カリウム血症に対するカリウム補充を行います。QT延長の原因が徐脈の場合はカテーテルによる心室ペーシング治療が行われます。

QT延長を認めない場合
:虚血心疾患(狭心症、心筋梗塞)の関与が最も重要なのでその有無を診断し,虚血性心疾患が関与している場合は虚血の改善が最も有効な手段となります。

再発予防に対する治療
器質的心疾患を有し心機能が低下している場合の長期治療は,植込み型除細動器(ICD)が第一選択です。器質的心疾患を有するが心機能が正常または軽度低下の場合は,ICDに代わる治療として抗不整脈薬のアミオダロン投与があります。
明らかな器質的心疾患を認めない場合:QT延長の有無により対応が異なります。

後天性 QT延長症候群:その原因が明らかな場合,原因治療のみで発作は消失します。

先天性QT延長症候群:β遮断薬が効果的です。β遮断薬使用後も再発する場合は植込み型除細動器(ICD)の適応となります。QT延長を認めない場合は,心電図と臨床所見からブルガダ症候群,カテコラミン誘発多形性心室頻拍など特殊な疾患を診断します。

ブルガダ症候群:ブルガダ症候群における致死的不整脈に対しては、植込み型除細動器(ICD)植込みを行います。

カテコラミン誘発多形性心室頻拍:カテコラミン誘発多形性心室頻拍の再発予防にはβ遮断薬が有効な場合があるが,重篤な発作が起こる場合には植込み型除細動器(ICD)植込みが最も確実です。


その3)脈が遅すぎる不整脈(徐脈):洞不全症候群(持続する洞徐脈,洞停止,洞房ブロック、徐脈頻脈症候群),房室ブロック,徐脈性心房細動
A)洞不全症候群(持続する洞徐脈,洞停止,洞房ブロック、徐脈頻脈症候群)
心臓は電気興奮で収縮運動をしていますが、右心房に存在する洞房結節が電気の発生場所(発電所)です。
洞房結節での電気発生の頻度により、心拍数が決まります。つまり洞房結節はペースメーカーの役目をしています。洞房結節には自律神経が関与して心拍数の調節をしています。安静時には身体の各臓器は血液による酸素、栄養をあまり必要としないため、副交感神経が優位となり、徐脈となります。運動時は筋肉など血液による酸素、栄養を多く必要とするため、交感神経が優位となり頻脈となります。この洞房結節の働きが悪くなって、必要に応じた電気発生ができなくなると、運動しても心拍数が増えない、持続して心拍数が極端に遅くなる、ときどき数秒間心臓がとまるなどの問題がでてきます。
これを洞不全症候群といいます。この病気では心房の異常を合併することがあり、そうなると徐脈と同時に頻脈が出てくることがあります。その場合では、頻脈が停止して時に心臓が数秒間止まりやすくなり、めまい、ふらつき、失神が起こります(徐脈頻脈症候群ともいいます。)。洞不全症候群では、心臓が止まってそのまま死んでしまうことはありませんが、失神してけがをしたり、交通事故にあったりする危険があります。また極度の徐脈が持続すると心不全をきたします。このため、洞不全症候群のために、めまい、ふらつき、失神、心不全などの症状が出る場合は、ペースメーカー植込み治療が必要となります。
ただし、洞不全症候群は加齢にともなって発生しますので、徐脈があっても症状を伴わない場合は治療の対象とはなりません。また長年のトレーニングや肉体労働により機能的に洞結節の機能が抑制されて、脈が遅くなっている人には治療の必要はありません。また、薬などの副作用で徐脈になった場合は、薬剤の中止で正常の脈に回復します。洞不全症候群の診断、ペースメーカーの適応には、24時間心電図(ホルター心電図)検査が有用です。

C)房室ブロック
心臓は右心房に存在する洞房結節から発生する電気興奮が(刺激伝導系といわれる繊維を介して)心房から心室に伝わり、収縮を繰り返しています。心房と心室の境界に存在する電気の通り道(刺激伝導系)を房室結節といいます。房室結節では心房から心室への電気の流れを調節する「変電所」の役目をしています。房室結節の電気の流れが悪くなり、脈がおそくなるのが房室ブロックです。この病気は重症度により、1度、2度、3度に分けられます。よく運動する人や若い人では迷走神経(副交感神経)の機能が高まって、生理的現象として房室結節からの電気が伝わりにくくなり、1度、または2度の房室ブロックが起こることがありますが、心配ありません。ただし、心筋梗塞や心筋症といった心疾患が原因で、2~3度房室ブロックが起こった場合は、極度に脈が遅くなる、数秒間の心停止が起こって、めまい、ふらつき、失神、心不全などの症状が出現し、ただちに治療が必要となることがあります。房室ブロックは洞不全症候群と異なり、心疾患が原因に隠れている場合があり、注意が必要です。
房室ブロックで治療が必要となるのは、徐脈による症状(めまい、ふらつき、失神、息切れ、心不全)が出るときです。症状が軽い時は薬で治療することもありますが、多くはペースメーカー手術が必要です。

C)徐脈性心房細動
徐脈性心房細動も、薬剤などの影響を取り除いても、徐脈が改善せず、徐脈による症状(めまい、ふらつき、失神、息切れ、心不全)が出るときは、ペースメーカー手術が必要です。

虚血性心疾患

狭心症・急性心筋梗塞

心臓は冠動脈と呼ばれる血管から流れる血液により酸素や栄養を供給されています。冠動脈は心臓の上から冠(かんむり)のように覆っており、そう名づけられています。狭心症は血液の通り道である冠動脈が狭くなって血の巡りが悪くなり、心臓に酸素が足りなくなるために、胸がしめつける、圧迫されるといった胸の痛みが出ます。狭心症は前胸部の痛みにとどまらず、下あご、くび、背中、左腕、上腹部におよぶ場合があります。冷汗、嘔気、嘔吐、呼吸困難を伴うこともあります。狭心症は長くても数分から10数分で治まりますが、30分以上続く場合は冠動脈が血栓で完全に閉塞された急性心筋梗塞を引き起こします。急性心筋梗塞を発症すると、急性期の生命の危険や慢性期の心不全などの重度の後遺症が問題になります。不安定狭心症や急性心筋梗塞の場合、より早期の治療により、心機能のダメージが軽減されるため、早期診断、専門病院への救急搬送が重要です。狭心症や急性心筋梗塞が疑われる場合は、躊躇せず、救急受診が必要です。

狭心症の分類その1)

狭心症には労作性狭心症と安静時狭心症があります。

労作性狭心症:階段・坂道を登った時、走るなどの運動をした時に起こるものを労作性狭心症といいます。冠動脈の動脈硬化によって狭窄が生じ、血流が悪くなっているため、運動などで負荷がかかると十分な酸素を心臓に運ぶことができなくなり、胸痛が生じます。痛みは多くの場合数分から数十分でおさまり、またニトログリセリンという薬を使うと痛みはすぐによくなります。

安静時狭心症:安静時に起こるものを安静時狭心症といいます。代表的なものは冠攣縮性狭心症です。冠攣縮性狭心症は冠動脈が痙攣して収縮し、血流障害(心筋虚血)をおこす狭心症です。冠動脈が血管内皮機能障害により異常収縮をおこすと考えられ、喫煙が最も重要な危険因子とされています。安静時、特に夜間から早朝にかけての時間帯が多いですが、昼間でもおこります。冠攣縮性狭心症は、西洋に比較して日本や韓国に多く、特に喫煙者の男性に多いといわれています。多くは自然に治まりますが、強い冠攣縮では致死性心室性不整脈による突然死や急性心筋梗塞をきたすこともあります。診断は、ニトログリセリンにより速やかに消失する狭心症発作で、①安静時(特に夜間から早朝にかけて)に出現する、②早朝の運動能力の著明な低下が認められる、③心電図上ST上昇を伴う、④過換気(呼吸)により誘発される、⑤くすりでは、カルシウム拮抗薬によって抑制されるがβ遮断薬によっては抑制されない、などの5つの条件のどれか一つが満たされれば、冠動脈造影検査を施行しなくても診断が可能です。治療として、禁煙指導および受動喫煙防止が非常に重要です。胸痛時にニトログリセリンを舌下し、治まらなければ5分ごとに3錠まで舌下を繰り返します。胸痛が治まらなければ、急性心筋梗塞の可能性もあり、救急受診の必要があります。発作時の胸痛の強い場合、頻度が多い場合は予防薬の内服が必要となります。安静時狭心症の中には、労作時にのみおこっていた狭心症が安静時にもおこるようになった不安定狭心症も含まれ、症状が長引くときは救急受診が必要です。

狭心症の分類その2)

狭心症には安定狭心症と不安定狭心症があります。

安定狭心症:安定狭心症とは、発作の起きる状況や強さ、持続時間などがほぼ一定で、大きな変化が少ない狭心症です。労作性狭心症では、労作により胸痛が出ても、休んで胸痛が治まるものをいいます。内服により労作でも胸痛がおこらなくなる場合もあります。堅いプラーク(コレステロールなどの固まり)の動脈硬化によって、血管内腔が狭くなっていることが多いようです。すぐに心筋梗塞に移行する可能性は低いと考えられています。安静時狭心症では、冠攣縮性狭心症で、発作の症状が軽い、頻度が稀、発作時にニトログリセリンですぐに胸痛が治まるものをいいます。

不安定狭心症:不安定狭心症とは、発作の起こる状況や強さ、持続時間がこれまでと変化してきた狭心症です。発作の回数が増えた時、発作の持続時間が長くなったとき、また労作(力仕事や激しい運動)で起こっていた狭心症が、安静時にも起こる場合等は不安定狭心症が疑われます。初めて狭心症の発作が起こった場合は、12回の発作後に心筋梗塞に移行することもあり、この場合も不安定狭心症に分類されます。この状態の血管内は、崩れやすいプラークの動脈硬化が存在することや、血栓(血液のかたまり)ができていること、あるいは血管のけいれんが起こりやすくなっていることが原因とされています。近い将来に心筋梗塞を発症する可能性が高いと考えられており、特に注意が必要です。急いで循環器専門医への受診が必要になります。

胸痛などで狭心症、急性心筋梗塞などが心配で受診された場合

当院では胸痛などで狭心症、急性心筋梗塞などが心配で受診された場合、まず問診で症状から狭心症、急性心筋梗塞などが疑われるかを判断します。胸部レントゲン(心不全の有無)、心電図(狭心症、急性心筋梗塞の所見の有無)、血液検査(トロポニンテストによる急性心筋梗塞の診断)などで、不安定狭心症、急性心筋梗塞の疑いが強ければ、すぐに三田市民病院など循環器専門治療の可能な病院へ紹介、緊急受診していただきます。不安定狭心症、急性心筋梗塞が否定され、安定狭心症であれば内服治療を開始し、病院での循環器科精密検査(心筋シンチ、冠動脈造営CT、心臓カテーテル検査など)が必要であれば、後日の外来予約をとらせていただきます。狭心症以外の疾患の鑑別も行い、虚血性心疾患の危険因子(高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、慢性腎臓病、高尿酸血症、肥満、睡眠時無呼吸症候群等)があれば、生活習慣指導、治療の検討をいたします。

狭心症、急性心筋梗塞などで病院で治療を受けられた患者様の安定期の外来診療

狭心症、急性心筋梗塞などで病院で治療をうけられた患者様で安定期の外来診療をしております。病院からの紹介で、当院を受診していただいています。定期的に診察、検査、処方をいたします。必要となれば、病院の検査、外来予約もいたします。

心臓弁膜症

心臓にある弁に障害が起き、本来の役割を果たせなくなった状態を「心臓弁膜症」といいます。
心臓弁膜症には大まかに2つのタイプがあります。「狭窄」は弁の開きが悪くなって血液の流れが妨げられる状態です。「閉鎖不全」は弁の閉じ方が不完全なために、血流が逆流してしまう状態です。心臓弁膜症は聴診で心雑音が聴取されます。胸部レントゲン(心拡大、胸水、心不全の有無)、心電図、血液検査(心不全の有無)、心臓超音波検査(弁膜症の診断)などの検査により、治療が必要な弁膜症であるか判断いたします。
心不全があれば、内服での治療を開始しますが、手術やカテーテル治療の適応が期待できる場合は専門の病院へ紹介いたします。高齢化社会となり、加齢による動脈硬化による大動脈弁狭窄症が増えており、手術以外に、経カテーテル大動脈弁治療TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation)という新しい治療も行われるようになってきました。重症大動脈弁狭窄症に対する新しい治療法で、開胸することなく、また心臓を止めることなく、カテーテルを使用して患者様の心臓に人工弁を留置します。低侵襲に加えて、人工心肺を使用しなくて済むことから、患者様の体への負担が少なく、入院期間も短いことが特徴です。高齢で体力が低下している患者様や他の疾患リスクを有する患者様などが対象となる治療法です。

心不全

心臓は全身の臓器に血液を供給するポンプの働きをする臓器です。心不全とは、さまざまな心臓の病気の結果、このポンプの働きに障害が生じていろいろな症状を引き起こしている状態をいいます。心筋梗塞や、不整脈、高血圧、弁膜症、心筋症などが原因となります。心不全は高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症など)、糖尿病などの生活習慣病との関連性が高く、高齢になるほど発症する人が増加します。心不全の症状には、動悸・息切れ、咳や痰、からだのむくみ、体重増加があります。
心不全の治療は原因疾患によって異なります。降圧剤、利尿剤、抗不整脈薬などの内服治療のほか、在宅酸素療法を導入する場合もあります。循環器精密検査、治療が必要な時は、専門の病院の循環器科に紹介いたします。

閉塞性動脈硬化症

主に手足、特に下肢の血管が動脈硬化によって硬く細くなって狭くなったり詰まったりすることです。血液の流れが悪くなり血行障害が起こり、初期では、足のしびれや、冷感程度ですが、病気が進行すると少し歩いただけで足、特にふくらはぎが痛むようになります。歩くと足がいたくなり、立ち止まって休むと治まります。やがて安静にしていても足が痛むようになり、さらに症状がひどくなると、足の指の色が血行障害で悪くなってきます。ちょっとした傷が原因で足先やくるぶしに潰瘍ができ、壊死することも多いです。60歳以上、特に70歳以上の男性に発症しやすく、喫煙が大きなリスクとされています。糖尿病や高血圧、高脂血症、高尿酸血症なども発症の危険因子となります。当院では症状の問診、足の診察、血液検査、検査機器による動脈硬化のABI検査、PWV検査を実施しています。カテーテル治療の適応と考えられる場合は病院の循環器科外来予約をさせていただきます。